10月14日、15日と東京ビッグサイト、「SCAJ2009」で開催されたJBC、ジャパンバリスタチャンピオンシップで丸山珈琲の中原見英バリスタが優勝いたしました!
1、2、3、ダ~~~~~!!!!
その昔、試合に勝利したアントニオ猪木が右腕を突き上げて叫んでいた「ダ~~~!」
今ではすっかりギャグのアイテムですが、あの当時は崇高な雄たけびでした。(少なくとも私には)
優勝がわかった瞬間、思わず「ダ~~!!」と叫びたくなりましたが、ふざけていると思われかねないのでグッと我慢しました。
応援してくださったみなさま 本当にありがとうございました。みなさまの温かいご声援、励ましがなければ気持ちが折れていたかもしれません。
この間の貴重な体験、得たものをこれからもみなさんと分かち合っていきたいと思っています。
準決勝16人枠に丸山珈琲から5人入ったことで、いろいろな方に「決勝も5人そろって出場だね」とか声をかけていただいていたのですが、いやいやとんでもない、最悪1人も決勝に進めないこともあり得るだろうな、と本気で私は思っていました。
そのくらい厳しいコンペティションだったと思います。
決勝に丸山珈琲からただ一人進出した中原バリスタは6人枠中6位で、7位とはわずか3点差という、まさに首の皮一枚で残った感じでした。
本人は自分の準決勝の競技に満足できず、終了後ずっと悔し泣きしていました。本人は、もう決勝には進出できない、と思っていたのだと思います。
ところがその日の夕方、翌日の決勝進出者発表で丸山珈琲から名前を呼ばれたのは中原バリスタただ一人。
だめだと思った自分だけが決勝進出となったことで非常に複雑な気持ちだったのだと思います。だから彼女は堅い表情をしていました。決勝に進出できなかった関口、鈴木、松本、井崎バリスタはとにかくショックで・・・・
チームとしてみんなで気持ちを一つにして練習してきただけに、中原バリスタも心の底から喜べていませんでした。
その晩、お葬式のような雰囲気のバリスタたち、阪本コーチと一緒に夕御飯を食べにレンタカーのバンで銀座方面へ・・・・
すると「築地すし好」の看板が。おいしくかつ明朗会計で私の気に入っている店です。
こんな重い気分の時、救ってくれるのは、美味しいお鮨しかないじゃないですか!!
「鮨だ、鮨にしよう! 今日はおれのおごりだ。駐車場見つけて!」
鮨屋さんに入り、「さあ、なんでも好きなものを食べなさい。好きなだけ食べるんだ。」と叫びつつ 「ただ一つ条件が・・・まず最初は上にぎり、鉄火丼、穴子丼、三色丼、のどれか一つを食べなさい」
いくら今はふさぎこんでいるバリスタたちとはいえ、19歳の井崎バリスタ、20代の松本バリスタが鮨を前にして食が進まないなんてことは考えられず、ある程度最初におなかを膨らませておかなければいけません。
鮨を頬張るバリスタたちを前に、「いいかい、1人1人はこの結果を非常に悔しく思っているだろうけど、全員落ちたわけではないんだから。中原バリスタは残ったんだから。あなたたちの分身が1人残ったんだから。だから落ちた4人、泣くのは明日の決勝が終わってからにしようよ。明日はみんなで全力で中原バリスタを応援しようよ。個人戦で負けたかもしれないけど団体戦ではまだ残っているんだから! 中原バリスタも4人に遠慮してそんな暗い顔しないで気持ちを高めていかないと。」
もちろんJBCには団体戦などありません。が、そう思ってがんばりましょう、ということです。
その間にも機先を制して、おなかがいっぱいになりやすい巻物などをこちらから注文し、ほらここからは好きなもの頼みなさい、と私が言った時点では彼らはすでに満腹に。
翌朝、バリスタたちとは違うホテルに泊まっている私に中原バリスタから携帯にメールがありました。「昨日の私のプレゼンは外国人ジャッジにはちゃんと伝わっていないと思います。それがもどかしくて・・・日本語では無理があります。英語でプレゼンしてもいいでしょうか?」
さすがに私も驚きました。ちょっとよく考えさせてくれるかな、と返信し、でもよくよく考えれば日本人ジャッジの方たちには準決勝で日本語のプレゼンを聞いていただいていますし、英語のわかる日本人ジャッジも多いので、これはいけるんじゃないかなと思いました。「じゃあ、そうしよう。中原さんのやりたいようにしたらいいよ。全部英語?」
「日本語とのミックスより、英語だけのほうがよっぽど気が楽です」という返事だったので「中原さんの好きなように思い切りやって!」と伝えました。
そんなやりとりをしたら気持ちがすーと晴れてきて、ああ、結果がどう転んでもいいな。彼女が本当に自分の力を出し切れればもう何も言うことはない、と胸がいっぱいになりました。
彼女はオーストラリアにいたので、オーストラリアアクセントが強く出なければいいけどな・・・とそれだけちょっと心配でしたが。
彼女の順番は1番。フィギアスケートでも1番というのは難しいですよね。でもこれも幸運でした。他の競技者のことは忘れて、まっさらに朝一番の自分をそのまま出すことに集中できたからです。
不思議なもので、英語でプレゼンする彼女は、ナチュラルで、リラックスしていて、心の底から微笑んでいて、それがジャッジに伝わっていて、センサリージャッジのジャスティンさんは身を乗り出して彼女の話を聞き入っていて・・・あんなジャスティンさんは初めて見ました。グアテマラ、アティトランの小規模生産者を訪れた時の彼女の経験、心の動きを、グアテマラ在住経験のある加藤ジャッジも目を赤くして聞いてくださって・・・・本当に感動的な15分でした。
英語はやはり感情を伝えるのに秀でた言葉なんですね。短い言葉数で、自分の気持ちをダイレクトに伝えることができるようです。
不思議なことに、前日の日本語のプレゼンより多い内容を話せたのに競技時間は1分以上も短くなりました。
ああ、これで結果がどうでようと、本当にどうでもいい。彼女のあのプレゼンを見れただけでおれは幸せ者だ、と思いました。
そのあとは、結果発表までなにがどうだったかあまり覚えていません。
今、品川にいるのですがこれからコスタリカの生産者のみなさん、ボリビアの生産者のみなさん、ACEのジョンさん、シェリー・ジョンズさん、アメリカのロースターのデニスさんたちと軽井沢、小諸に向かうのでホテルを出なければなりません。続きはまた後で。